おつかれさまです、ケビすけです
今回は流量計の指示不良の原因の中でもよく起こり得るキャビテーションについて記事にしました
キャビテーションと聞くと、ポンプとか撹拌機のトラブルが思い浮かぶと思います
キャビテーションの原理上、流量計やバルブなど計装品やバルブで起こってもおかしくないです
プラントで起こるトラブルの現象は、ほとんどの場合、ちゃんと原理・原則に則っています
今回は、敢えてプラントの安全・安定運転を支える流量計に着目しました
気泡(ガス)の巻きこみに関して、自然流下配管でのトラブルについて以下の記事で解説しています
それでは、流量計で発生するキャビテーションについて解説します
キャビテーションとは何か
キャビテーションとは英語でcavitation、液体中に泡が生じる発泡現象を指します
発泡が生じる理由としては、空気(ガス)を巻き込んでいるか、沸騰によるかのどちらかがほとんどです
流量計のトラブルで生じるキャビテーションの多くは、液体の沸騰によるものです
ちなみに前者はエア(ガス)噛みと言われるもので、そもそも気泡を持ち込ませない対策が必要です
液体の沸騰と聞くと違和感を感じる方もいるかもしれません
沸騰は液体がその温度での飽和蒸気圧力以下になることで液体の一部が気体になる現象です
したがって、温度が変わらなくても、急激な圧力低下が原因で発泡することはよくあります
流量計での圧力損失を考慮していないと、圧力損失により飽和蒸気圧になりかねません
キャビテーションについては、「トラブルから学ぶ配管技術-トラブル事例とミスを犯さない現場技術」という本が個人的には分かりやすいです
事例と併せて紹介しているので、学習のとっかかりにはちょうど良い本です
キャビテーションによる流量計のトラブル
流量計でキャビテーションが発生すると、流量計の指示値が正確に出ません
流量が急激に変動する場合は、気泡の巻き込みによりキャビテーションの可能性が高くなります
流量を見て制御しているパラメータ(液面、温度、反応、触媒など)があれば要注意です
流量指示の変動で、取扱物質(自己反応性、自己分解性など)によっては大事故の原因となります
更に流量変動が常習化していると、人の心理としてそれが当たり前と監視対象から外れてしまいます
たかが流量計の指示変動ですが、プラント運転全体を乱す原因になってしまいます
プラント運転ではその流量計の指示値が乱れるとどうなるか、よく考えるようにしましょう
流量計でのキャビーテンション対策について
キャビテーションは流体の圧力が飽和蒸気圧以下で生じる現象です
つまり、キャビテーションを防止するには、流体の圧力を飽和蒸気圧以上に保つことです
流体の圧力を飽和蒸気圧以上に保つアプローチとしては次の2つがあります
流体の圧力を上げる
流体流流量計メーカーである株式会社オーバルのHPが参考になるので紹介します
以下の計算では、流量計でのキャビテーションの発生を防止するために、流量計の2次側(出口側)の圧力の目安を算出していますので、ご参考に
① コリオリ式流量計:\(Pd ≧ 3ΔP + 1.3Pv \)
➁ 渦流量計 (デルタ形):\(Pd ≧ 3ΔP + 1.3Pv \)
③ タービン流量計:\(Pd ≧ 2ΔP + 1.25Pv \)
\(Pd\) : 流量計の2次側(出口側)圧力 【\(kPa\)】
\(ΔP\) : 流量計での圧力損失【\(kPa\)】
\(Pv\) :使用温度での液体の飽和蒸気圧【\(kPa\)】
飽和蒸気圧を下げる
飽和蒸気圧と温度の関係としてAntoine(アントワン)式が有名です
Antoine式
\(log_{ 10 } Pv = A – \frac{ B }{ T + C }\)
\(Pv\):蒸気圧 【\(mmHg\)】
\(t\) :流体温度 【\(℃\)】
\(A, B, C\) :Antoine定数【\(-\)】
※Antoine定数は化学工学便覧などに記載しているので参照してください
上式のように流体温度が低下すると飽和蒸気圧は上がります
どれくらいまで流体温度を下げればキャビテーションを起こさないかはAntoine式を使えば一発です
配管レイアウトを変えられない場合など、流体の温度を下げることが可能な場合は有効です
まとめ
流量計のキャビテーションについてまとめます
流量計のキャビテーションは化学プラントでは案外発生しているケースが多いです
流量計の指示値は制御されていることが多く、指示値が乱れると事故につながりかねません
流量計の指示値がおかしいなと感じられたら、本ページを参考にしてもらえると幸いです
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